2020年の大統領選挙は異例の長期戦となり、11月3日の投票日から数えて5日目の7日(日本時間8日午前1時半ごろ)にペンシルベニア州の選挙人獲得によって、バイデン氏の勝利が決まりました。
今回の選挙戦の鍵となったラストベルトの一つであるペンシルヴェニア州とはどのような週なのか、また日本人旅行者にとってどのような魅力があるのか迫っていきたいと思います。
ラストベルトとは
大統領選挙でたびたびメディアで取り上げられてきたラストベルトとは「錆びついた工業地帯」を意味し、人口の減少が激しく、産業から取り残された中西部の州を指しますが、今回注目されたのはミシガン湖の西に位置するウィスコンシン州、かつて自動車産業で栄えたデトロイトを有するミシガン州、そして建国の地フィラデルフィアを有するペンシルヴェニア州の3周です。
これらの地域はもともと鉄鋼業で栄え、20世紀初頭の交通網の発展によってデトロイトを中心に自動車産業で栄えましたが、より人件費のかからない製造業の海外委託や、IT産業の台頭などによって地域全体で景気が後退、治安が悪化した歴史があります。
そのため、これらの地域では雇用の回復が最も望まれており、国内の事業立て直しを旗印にしている共和党を支持する人が多いのが特徴で、伝統的に大統領選挙では共和党の大統領が選ばれる地域でした。
今回の選挙でバイデン氏を選出した理由
共和党の地盤であるラストベルトであるにもかかわらず、今回の選挙では民主党のバイデン氏が選出されたのは、バイデン氏が掲げる政権公約の中に雇用の回復があったことと、ラストベルトと呼ばれる地域の中でも都市部と地方の格差によるねじれによるものと思われます。
今回はラストベルトと呼ばれる地域の中でも、選挙戦の鍵となったペンシルヴェニア州について見ていきたいと思います。
ペンシルヴェニア州は1776年、アメリカ合衆国がイギリスからの独立を宣言したフィラデルフィアを有する、全米で最も古く歴史のある州の一つとして知られています。
また、同州内にはピッツバーグやエリー湖に面したエリー、アレンタウンなど、鉄鋼業で栄えた大きな街が点在しています。
これらの地域のうち、エリー湖に面したスクラントン郡はバイデン次期大統領が生まれた場所です。
大統領選挙があるとメディアではしばしばアメリカの地図が表示され、州ごとに民主党が青、共和党が赤で表示され、選挙人を獲得するとどちらかの色に州が染まりますが、これだけですと選挙の本質は見えていません。
そこで州単位ではなく、郡単位で観ることで地域の地盤が見え、旅行者にとっても役に立つと言えます。
ペンディルヴェニア州だけでなく、全米の州に言えることですが、郡単位で選挙結果を見ると大都市がある郡では民主党、郊外では共和党が大半を占めていることがわかります。
そのため、ニューヨークやロサンゼルスなどの大都市が点在し、これらの街の人口が著しく多い州では必然的に民主党が選出され、州内に大都市があっても地方の人口が多い地域では大都市の世論が反映されず、結果的に共和党が選出されることになります。
これにより、共和党の地盤に住んでいる民主党支持者はより自分の意見が反映され、より選択肢の多い大都市が集中する州に移動する事で、共和党支持層が多い内陸部の人口減少に拍車がかかっているともいえます。
また、今回ペンシルヴェニア州で民主党のバイデン氏が選出されたのは、やはり彼の地元であることが大きな理由でしょう。
ワシントンD.C.から見たペンシルヴェニア州
ペンシルヴェニア州最大の都市にして合衆国建国の地、フィラデルフィアはワシントンD.C.から電車で約2時間、車で約1時間30分と、比較的近い場所にあります。
そのため、日帰りでの観光が容易で現地発着のツアーや個人で気軽に行くことができます。
フィラデルフィア市内の歴史地区には独立宣言が採択された独立記念館や旧国会議事堂、自由の鐘ホールなど、見どころがたくさんあり、これらがある歴史地区は世界文化遺産に登録されています。
また、州西部のランカスター地方は今もなお19世紀半ばごろの生活様式を守り続けているアーミッシュの村があり、彼らの生活を体験することもできます。
両方の支持者が混在する一つの州
大統領選挙の報道をする最、多くのメディアでは州単位で報道しますが、郡単位で見ることによってそれぞれの州の特徴がより細かく見え、旅行者にとっても有益な情報が得られるといえます。
一般的にアメリカを旅行する最、民主党支持者が多い地域に行けば快適な滞在を愉しめると言えるので、渡航の際にはより細かい単位で地域の情報を把握するようにしましょう。