物事には表と裏があります。
ワシントンD.C.で表と裏について論議されることが多い建物としてホワイトハウスがありますが、同じように合衆国議会議事堂でもよく「どっちが正面?」と言われることがあります。
今回は合衆国議会議事堂の玄関にまつわるお話を紹介します。
ちなみに、ホワイトハウスの玄関に関する記事はこちらをご覧ください。
合衆国議会議事堂の正面玄関は東側の5か所と西側の1か所
いきなりですが、ホワイトハウスに多くの正面玄関があるように、合衆国議会議事堂にも正面玄関がたくさんあります。
一般的にガイドブックには巨大な池がある西側の写真が載っているので、西側だけが正面と思われがちですが、東側には西側を上回る数の正面玄関があります。
公式上合衆国議会議事堂の西側はウエストフロント、東側はイーストフロントと呼ばれていて、ウエストフロント側には中央のドーム下に2か所だけあるのに対し、イーストフロント側には中央に1か所と南北にそれぞれ2か所ずつ正面玄関があり、用途によって使い分けられています。
最も格式が高い玄関はイーストフロント側中央
議事堂の中で最も格式が高いとされている玄関はイーストフロントに面した方にある中央玄関です。
この玄関は鋳鉄製のドームに直結する出入り口で、大統領が議会に出入りする時にしか使われません。
そのため、こちらの玄関は「開かずの扉」と呼ばれています。
開かずの扉があることから、一般的には東側が合衆国議会議事堂の正面と言われています。また、当サイトでも次の理由から合衆国議会議事堂の正面は東側とさせていただきます。
- 議事堂の東側玄関には古代ギリシア神殿をモチーフとした格式あるファサードを備えている。
- 議事堂の階数カウント方式はイギリス式を採用していて、5つある正面玄関のうち3つは階段を登った先の1階に直結している。
- 3つの玄関のうち「開かずの扉」と呼ばれている中央玄関は議事堂の中で最も格式が高い空間とされる中央ドームの直下(ロタンダ)に直結している。
大統領就任式が行われるウエストフロント
ナショナルモールに面したウエストフロントでは4年に一度、1月20日に大統領就任式が行われます。
ウエストフロント中央には半円形の曲線を用いた建造物があり、就任式が行われる際にはそこに特設ステージが設営されて、大統領をはじめ政府関係者はウエストフロントに面した玄関から出入りすることになります。
こちらの玄関ですが、ナショナルモール側から見るとかなり高い位置にあるように見えますが、実は議事堂の階数でいうと地下にあるのです。
合衆国議会議事堂があるエリアはキャピトル・ヒルと呼ばれていて、その名の通り小高い丘の上に建っていて、西側に行くにつれて地面の高さが低くなっています。
そのため、地下にあってもウエストフロントに面している部分は地上からかなり高い位置に顔を出していることになり、結果的に西側からは玄関を見上げることになります。
クラシカルで荘厳なイーストフロント
大統領就任式が行われるなど、華やかなイメージのウエストフロントに対して、イーストフロントは伝統を重んじた格式ある雰囲気が漂っています。
イーストフロントにはドーム中央と上下両院側にそれぞれ古代ギリシア建築をモチーフとしたファサードがあり、直線的な構造となっています。
また、イーストフロントには広大な広場を備えており、大統領就任式などのイベントが行われる日には関係車両を止めておく駐車場として利用されたり、就任式で任期を終えた大統領がメリーランド州のアンドリューズ空軍基地へ向かうためのヘリポートとして利用されるなど、実用的な毒面も兼ね備えています。
就任式が行われる日の大統領の導線から見る玄関の格
大統領就任式が行われる際、現職の大統領と新大統領、関係者は議事堂の伝統に則ってそれぞれの玄関から出入りします。
大統領の就任は伝統的に1月20日の正午とされていて、その時刻に合わせて大統領の宣誓が行われます。
そのため、就任式のために議会に向かう時点ではまだ大統領は交代していませんので、新しく就任する大統領はイーストフロントの中央玄関は使用せず、現職の大統領が中央玄関から出入りします。
一方新大統領とその関係者はこの時点ではまだ大統領や閣僚に就任していませんので、ロタンダに直結した玄関からではなく、上院側の階段下にある地階に面した玄関から議事堂の中に入ります。
その後廊下を通って中央ドームの真下にあるクリプトと呼ばれる空間に出ます。このクリプトには44本のドーリア式の柱があり、整然と円形に並んだ姿はまさに圧巻の一言です。
クリプトに差し掛かるとそこを西側に折れ、階段を降りた先のウエストフロントに設けられた特設ステージへと向かいます。
就任式を終えると新旧の大統領は再び議事堂の中に入りますが、この時点ではすでに大統領が交代していますので、議事堂を出るまで行動を共にします。
議事堂に入ると今度は階段を2フロア分登って中央ドーム直下のロタンダに出ます。そこから下院側に向かった先にある国立彫像ホールに入り、そこで昼食会に臨みます。
昼食会を終えると新旧の大統領は再びロタンダを通りそこからイーストフロントに直結する中央口から議事堂の外に出ます。
はじめに任期を終えた前大統領が外に出てイーストフロントに駐機してある海兵隊所属のヘリコプターでアンドリューズ空軍基地へ飛び立ちます。
その後新大統領が同じ場所から外に出てジョン・フィリップ・スーザの『National Emblem March』の演奏が流れる中、専用のリムジンに乗り込み就任パレードに臨みます。
市民のためのイーストフロント
伝統と格式を重んじる議事堂のイーストフロントですが、普段から一般市民にも開放されていて誰でも事前の予約なしに立ち入ることができます。
また、イーストフロントの地下にはビジターセンターがあり、議事堂内部の見学チケットを入手できたり、議事堂やワシントンD.C.に関する展示物もたくさんあります。
幾重にも重なるフェンスで守られているホワイトハウス に対し、合衆国議会議事堂には車両止めはあるもののフェンスはありませんので、一般市民に広く開放されていると言えるでしょう。
用途で使い分ける議事堂の正面玄関
合衆国議会議事堂には用途に応じて使い分けられる正面玄関がいくつもあり、それぞれ東側と西側に面していることからイーストフロント、ウエストフロントと呼ばれています。
中でもイーストフロントに面した中央玄関は最も格式が高く、大統領が出入りする時にしか使われないため、「開かずの扉」と呼ばれ、ひときは厳かなオーラを放っています。
この扉はイーストフロントからは誰でも遠目に見学できますが、無料の内部見学ツアーに参加すればツアーの締めくくりに間近で観ることも出来ます。
議事堂のツアーに参加した際にはぜひチェックしてみてくださいね。
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