世界有数の経済大国であるアメリカは1776年7月4日に独立宣言採択、1788年の合衆国憲法発効に始まり、わずか240年のあいだに急発展を遂げ現在に至る、文字通りの超大国です。
私たちはこの国の歴史について学ぶ時、しばしば独立革命で活躍したワシントン総司令官をはじめとする、いわゆる建国の父と呼ばれる人物の生い立ちや歴史的偉業などに触れます。
一方で、それを陰で支えた女性や子供、先住民などについてはあまり触れる機会がなく、彼ら、彼女らの視点から観た歴史についてはあまり広く知られていません。
歴史は常に勝者によって後世に伝えられますが、近年では歴史の表舞台からだけではなく、いろいろな視点から当時の出来事を探ってみようという動きが注目されるようになり、世界中の様々な場所でそのようなテーマの研究施設が設立されています。
今回はアメリカの建国時代に陰で支えた女性の目線で当時の研究を行っているDARについて紹介します。
DARとは?
DARとは「Daughters of American Revolution(アメリカ革命の娘たち)」の略称で、その名の通り、建国時代の女性をテーマにした研究施設、図書館、そして博物館の機能を持つ研究機関です。
施設で働くスタッフは警備員を除き全て女性で、彼女たちは皆、建国時代にアメリカに入植した人の末裔です。彼女たちは主に、自分たちの祖先や、出身地域にいる建国時代の末裔たちの研究、調査、当時使われていた調度品などを収集し、博物館で管理、展示などを行っています。
一般的な博物館とはちょっと違う、DARの特徴と入館にあたっての注意点など
DARはその名の通り、女性視点のアメリカ史をテーマにした研究施設で、博物館や図書館はその附属施設といった佇まいになっています。
そのため、中に入る際には通常のセキュリティチェックに加え、利用目的を聞かれ、セキュリティ通過の証明シールをもらって常に見えるところに身に付けてなければなりません。
また、入り口はちょっと分かりづらいところにあり、ホワイトハウス西側の17番通りからD通りを曲がってすぐ左側にある看板が目印になっています。
その奥にある博物館にしては非常に小さなドアの横には、この建物の住所である1776番地と刻まれており、ここが独立革命時代の末裔たちをテーマにした研究施設であることにようやく実感が湧いてくる構造になっています。
建物内部の様子と見学方法について
独立革命時代の女性をテーマにしたこの施設は、外観こそ石造りの立派な佇まいですが、一歩中に入るとそこは学校のような雰囲気で、どこか懐かしく、温かみのある雰囲気に包まれます。
市内にあるほとんどの建物は巨大でエントランスや廊下もとてつもなく広いですが、DARの中は図書館を除き、ほぼ全てのエリアはこじんまりとしていて、気軽に見学することができます。
博物館は入り口を入ってすぐ右側にあり、エントランスと内側の壁は前面ガラス張りになっていますので、奥まで見渡すことができます。また、館内は白を基調としたインテリアになっていますので、非常に明るい上、一般の博物館よりもセキュリティが厳しいため、平日であれば貸し切り状態で観覧できたりもします。
博物館の見学は自由にできますが、入ってすぐ右側の受付には常にスタッフがいるので、見学の際には一言挨拶してから入ると良いでしょう。また、写真撮影も自由にできますが、他の人が映り込まないよう配慮したり、スタッフに一言声をかけるなど、お互い気持ちの良い滞在がきできるよう心がけましょう。
博物館を出てエントランス付近に向かうと別の受付があり、運が良ければ専属のガイドがついて図書館などの他の施設も案内してくれます。
元々劇場であったこの建物には巨大なホールがあり、現在そこが改装され図書館として機能しています。そのため、図書館の内部には当時の面影が残っていて、本棚がある多層構造の半円形をした観客席の跡や、1階席跡には閲覧スペース、貸し出しカウンターの後ろにはステージさえもそのままの形で残っています。
劇場だった場所を図書館に改装したこのスペースは大変魅力的で、写真に収めておきたいところですが、ここではスタッフや図書館利用者が常に閲覧、研究を行っている場所ですので、訪問した際、写真撮影は遠慮しておきましょう。
一方、図書館からバックヤードに入って2階部分に上がると、かつて控室として使われていた場所が展示室として開放されています。
この部屋にはそれぞれ州の名前が付いていて、各州から集められた建国当時から1860年代までの調度品が収められていて、アメリカの調度品がどのように発展を遂げたのかを垣間見れます。このエリアは自由に写真を撮れますので、訪問した際には是非とも記念に納めておきましょう。
勝者の歴史だけが歴史ではない、舞台裏で支えた強く、そしてたくましく生きた女性たち
ワシントンD.C.にはスミソニアンをはじめ、様々なテーマの博物館がありますが、ここDARは独立革命時代に行きた女性をテーマにした博物館と、その末裔たちが運営する図書館などから成る研究施設で、一般の博物館とはまたちょっと違う場所になっています。
研究施設というとちょっと敷居が高く感じてしまうかもしれませんが、DARは他の博物館と同様、一般に開放されていますので、ワシントンD.C.に行った際には是非気軽に立ち寄ってみてください。
一般のツアーでは行くことのない場所ですので、行けばきっと話しのタネになりますよ。