ワシントンD.C.のナショナルモールには様々な博物館がありますが、そのうちの1つに「国立アメリカ・インディアン博物館」というところがあります。名称の通り、アメリカの先住民族に関する数々の文化資料や記録写真が収集されているのですが、これらの資料は54年間かけて収集されたものです。
建設資金の問題を乗り越えて2004年9月21日に開館するまで、15年かけて建てられたこの博物館は、アメリカ合衆国で一番初めの、先住民の生活に焦点を絞った博物館となりました。
先住民の意見を取り入れてつくりあげられた博物館
博物館の名称について
国立アメリカ・インディアン博物館という名称は、博物館を建設するにあたって、1989年に法案を可決した議会によって選ばれた名称です。当時、博物館の名称はまだ決まっていなかったのですが、インディアンの中で、ネイティヴ・アメリカンという呼称は不評なため、先住民に対してアメリカ・インディアンとネイティヴ・アメリカンのどちらが好ましいかという住民投票を行った結果、アメリカ・インディアンが選ばれる結果となりました。
その後、名称の変更を行おうとする運動が興りましたが、現在の名称で満足していると答えた先住民の方が多かったことと、先住民の権利団体である「アメリカ・インディアン運動」がネイティヴ・アメリカンという呼称を批判したことを受け、名称は変更されることなく、無事に開館を迎えました。
建物の構造、正面玄関が東向きにある理由
角ばったところがほとんどなく、全体的に曲線を組み合わせてデザインされていますが、こちらも先住民をルーツを持つ建築家、ダグラス・カーディナルが、彼らの文化に馴染むようデザインを手掛けた結果たどり着いたデザインとなりました。途中でプロジェクトからは降りたものの、完成するまでアドバイスを継続していました。
建物の外観はカソタ石灰岩で覆うことで、長い年月、風雨にさらされてできた自然の岩層を再現しています。
また、博物館は正面玄関を東に向けて設計されています。これは、住居を造る際に朝日が昇る東に入り口を持ってくるという、先住民の伝統文化に基づいて設計されているためです。
先住民の生活に触れられる貴重な博物館
先住民の文化について取り上げている博物館は他にもありますが、これだけに絞った博物館というのは多くありません。収集されているものから建物の外観、諸々のデザインなど、すべての要素に置いて彼らの文化に馴染むよう考えられている国立アメリカ・インディアン博物館を訪れれば、先住民の文化を肌で感じることができるでしょう。