国立建築博物館は、ワシントンD.C.にある建築芸術専門の博物館です。この博物館が所在する建物は、かつてはペンション局のオフィスビルとして使用されていました。建物は1887年に完成し、陸軍の将校長である「モンゴメリー・C・メイグス」がデザインしました。
今回はスミソニアンの博物館としては珍しい有料の施設である、国立建築博物館について紹介します。
国立建築博物館がある場所と歴史
ワシントンD.C.の北西区、司法広場に隣接する国立建築博物館は、建築、設計、工学、建設、都市計画の博物館として知られています。1960年代まで合衆国政府のオフィスとして使用されていたこの建物は、荒廃状態に陥り、解体される危機に直面していました。そこで、政府は建築家、クロエティエル・ウッダード・スミスに建物を他の用途で利用できないかの報告を依頼し、1967年の報告書により、建築芸術に特化した博物館として利用されることとなりました。
1969年には「国立史跡」に登録され、1980年には民間非営利団体として建築博物館が設立され、建物自体は1997年に正式に国立建築博物館と改名されました。
建物が建てられた背景には、南北戦争後の合衆国議会が、退役軍人やその遺族、扶養家族、特に未亡人や孤児の年金保険制度を拡大する法律を可決したことがありました。この法律により1,500人を超えるスタッフが必要となり、新しい建物が必要とされました。そして、新しい建物を設計し、メイグスのデザインが選ばれました。彼は、イタリアのルネッサンスの前例、特にローマのファルネーゼ宮殿やカンチェッレリア宮に基づいて設計を行いました。
博物館で観ることができる展示物
国立建築博物館は、建造された歴史に焦点を当てた展示を行っています。その展示内容は、建築史や建築家の仕事、建築デザイン、都市計画、環境保護、建築技術、建設産業など多岐にわたります。博物館には、貴重なコレクションが多数収蔵されており、国内だけでなく、世界中の建築に関する展示物が展示されています。
また、この博物館の見どころとして、世代ごとに変化していく家や家賃などの物価や考え方の変化を、歴史的背景とともに展示しているコーナーがあります。ここでは、アメリカの歴史を通して変化してきた住宅事情や建築の様式、都市計画に関する展示物を見ることができます。
建物自体も見どころの一つで、館内には印象的な柱が多数あります。1階はドーリア式、2階はイオニア式の列柱で支えられており、吹き抜けになっているところではコリント式の列柱を観ることができ、美しい景観を愉しめます。特に建築アートや建築家に興味がある方には、柱の美しさに感動すること間違いなしです。館内には、建築家や建築に関する書籍や資料も充実しているため、建築に興味がある方にとっては非常に魅力的な場所となっています。
国立建築博物館の建物の特徴
国立建築博物館の建物は、多くの建築的特徴が見られます。建物の外観には、トラヤヌスの列柱やパルテノン神殿の装飾など、古代の建物を思わせる場面が描かれたCaspar Buberlの彫刻が施されています。
内部には、豪華な柱やフリーズ(柱と天井の間に施されている装飾)があり、広々とした内部は大統領就任式の際に開かれる舞踏会にも使用されています。また、南側の入り口付近の床には大統領の紋章が設置されています。
建物自体は、1969年に国立史跡に登録され、1980年には国定歴史建造物に指定されました。現在、建物は改修工事が行われ、新しい展示スペースを作り、アクセシビリティを向上させるために改装が進んでいます。
一つの建物から都市まで、建築について幅広く触れる
国立建築博物館は、建築や都市計画に興味のある人々にとって、非常に興味深い場所です。博物館の展示物は、アメリカや世界中の建築家や都市計画家、ランドスケープデザイナーによる作品や、国際的に有名な建築物、歴史的建造物、家具、写真、模型、ドローイングなど、建築に関する多岐にわたる内容となっています。