この言葉でお馴染みの第16代大統領エイブラハム・リンカーン、彼の功績を称えて作られた建物がワシントンD.C.にあります。
ナショナルモールの西端、ポトマック川のほど近くにあるひときは大きな白亜の建造物、それこそワシントンD.C.を代表する観光スポットの一つ、リンカーン記念堂です。
ギリシア建築様式を忠実に再現した荘厳なる佇まい
ワシントンD.C.にはギリシア建築様式で建てられた建造物が数多くあります。ナショナルモール東側にある合衆国議会議事堂の柱はギリシア建築で最も豪華絢爛なコリント式、ホワイトハウスでは柱上部と天井の間の渦巻き装飾が特徴のイオニア式が用いられています。
しかし、それらの建造物は柱にこそギリシア建築様式を見ることができますが、建物全体は後世の建築様式を取り入れるなど、純粋なギリシア建築様式ではないのです。
それらの建造物に対して、リンカーン記念堂はアテネのパルテノン神殿に見られるような周柱式が用いられ、36本のドーリア式列柱で支えられています。この36という数字はリンカーン大統領がこの世を去った時に合衆国に加盟していた州の数を表していて、その上には記念堂が完成するまでの間に合衆国に加盟した州の名前が彫られています。
合衆国の政治を見守っている、内部に鎮座する大統領が見つめる先
建物内部には彫刻家ダニエル・チェスター・フレンチによるリンカーン大統領の坐像が東向きに鎮座しています。
坐像の両側の壁には彼の演説が彫られていて、向かって左側には「人民の、人民による、人民のための政治」でお馴染みのゲティスバーグ演説、右側には第二期大統領就任演説が刻まれていますが、注目したいのは大統領の坐像が東を向いていることです。
建物の東側にはリフレクティングプール、第二次世界大戦記念碑、ワシントン記念塔があり、その先には合衆国議会議事堂が建っています。
また、大統領就任式の前夜には、新大統領はリンカーン記念堂の前で演説をし、その後内部を訪れます。
今もなお、合衆国の行く末を見守っているリンカーン大統領、彼の功績を称える時の権力者は後を絶ちません。
自由の象徴としてのリンカーン記念堂
リンカーン記念堂の入り口周辺では過去に様々な出来事がありましたが、中でも歴史に大きく残っているのは1963年8月28日のワシントン大行進ではないでしょうか?
この日、マーティン・ルーサー・キング牧師が率いる公民権運動が最高潮にに達し、自由と平等を求める多くの市民がワシントン市内を埋め尽くしました。
デモ行進が佳境に入り、キング牧師率いる市民らはリンカーン記念堂前にたどり着き、彼の説教に耳を傾ける事になります。
彼が「I have a Dream(私には夢がある)」という説教を行った場所には記念の文字が刻まれていて、誰でもそこに立つことができます。自由と平等を説き、多くの人に理想を掲げた彼もまた、リンカーン大統領の偉業をたたえ、この場所で歴史に名前を残したのです。
昼間だけではない、ライトアップされひときは輝きを増す夜の記念堂
ナショナルモールの西端に建つ白亜のリンカーン記念堂、朝日を浴びて眩いばかりに照らされるリンカーン大統領の像を観に行ったり、よく晴れた日の昼下がりに入り口付近の階段に座って散策する人を眺めながらゆっくり過ごすのも良いですが、お勧めしたいのは日が沈んだ後に訪れることです。
ライトアップされ、朝や昼間とはまた違った荘厳な雰囲気を味わってみてはいかがでしょうか?
昼間は自転車や乗り降り自由のバス、夜はナイトツアーで記念堂へ
第16代大統領エイブラハム・リンカーンの偉業を称えて建てられたリンカーン記念堂。ナショナルモールの西端にあり、市内やアーリントンのホテルからも距離がある場所なので、徒歩でアクセスするよりも、交通機関を利用することをお勧めします。
昼間は市内の至る所に駐輪スポットがあって30分以内に返却すれば1日たったの8ドルで乗れてしまう自転車での観光か、ユニオン駅を拠点に発着している乗り降り自由のダブルデッカーバスでの観光がベストです。
夜は比較的安全と言われている北西区でもナショナルモール付近には不審者が出ることがあるので、安全面を考慮してナイトツアーに参加するのが良いでしょう。
ナイトツアーではリンカーン記念堂だけではなく、ナショナルモール付近の観光スポットを網羅している上、現地のガイドが丁寧に解説してくれるので、初めてワシントンD.C.を訪れる人にとってぴったりのコースになっています。ツアーの発着場所はユニオン駅で帰りもアクセスが抜群です。
しかも、このツアーは乗り降り自由の観光バスと同じ会社が運営しているので、2日間乗り放題のチケットを買うとナイトツアーは無料で参加できてしまいます。
交通機関を上手く使いこなして、リンカーン記念堂を1日満喫してみてはいかがでしょうか?