ワシントンD.C.のナショナルギャラリーには印象派の中心的人物、クロード・モネの名画が数多く展示されています。
中でも光の移ろいを捉えた『ルーアン大聖堂』や、真夏の日差しをの中、純白のドレスを着た婦人が日傘を刺す『散歩・日傘をさす女』はモネの代表作ともいえる作品です。
この他にもナショナルギャラリーにはモネが描いた作品がいくつかありますが、今回はこれら2つの作品をクローズアップして、モネが描いた光の世界を探求したいと思います。
移りゆく光と眩いばかりに輝く一瞬の光を捉えた対照的な作品
モネが描いた2つの作品、『ルーアン大聖堂』と『散歩・日傘をさす女』は光の移ろいと一瞬の光を捉えた、この世に存在する同じ光を対照的に捉えた作品といえます。
『ルーアン大聖堂』は1892年から1894年の2年間にかけて、ルーアン大聖堂の西ファサードを同じ方向から捉えて描いたシリーズ作で、全部で30以上にものぼります。
このうち、ナショナルギャラリーには2つあり、西館メインフロアのギャラリー80に展示されています。
2つある作品は同じ壁に並んで展示されていて、向かって左側には夕陽を浴びて黄金色に輝く大聖堂を描いた『西ファサード・陽光』、右側には朝日が差し込む場面を描いた『西ファサード』があります。
左側の作品は夕方の光を一心に浴びて眩いばかりに輝いている大聖堂を、右側の作品では東から登る日の光を、控えめでありながらますます輝きを増していこうとする大聖堂の姿を見事に捉えています。
一方、真夏の眩いばかりの日差しを一瞬にして捉えた『散歩・日傘をさす女』では女性の背後から差し込む光を手前の影と奥に広がる雲と空の対比で表現しています。
また、うねるような雲と白いスカートで動きを表現していて、今にも女性やそこにある風景が動き出しそうに感じることでしょう。
モネが描いた光の世界を実際に体感する
モネはこれらの作品を通して、移ろいゆく光と眩いばかりに輝く一瞬の光を見事に表現しました。
光という身近な存在であるが故に、私たちは普段気に留める事はあまりありませんが、ワシントンD.C.にはモネが描いた光を身近に体感できる場所があります。
そこはワシントン大聖堂で、モネが描いたルーアン大聖堂とほぼ同じ方角を向いて建っていますので、大聖堂の西ファサードに立つ事で、モネが描いた光の世界を身近に体感することができます。
本来であれば、モネが描いたルーアン大聖堂を訪れたいところですが、一度の旅行でワシントンD.C.とフランスを周遊する事はほとんどのケースでありませんので、手っ取り早くワシントン大聖堂で雰囲気を味わってしまいましょう。
また、夏場にワシントンD.C.を訪れれば、『散歩・日傘をさす女』の世界を体感できます。
ワシントンD.C.は東京や大阪よりも緯度が高いため、夏場の日照時間が2時間程度長くなります。さらに夏時間を導入しているので、完全に暗くなるのは9時半ごろになります。
日中は非常に暑く湿度もそれなりにありますので、長時間外にいると体力を消耗してしまいますが、日陰はひんやりとして涼しいので、まさに光と影が織りなす世界を身をもって体感することになります。
ワシントンD.C.でフランスが産んだ名画を鑑賞
フランスの自然が生み出した印象派は、当時の社会では酷評されていました。それをいち早く評価したのがアメリカであったため、今日ワシントンD.C.のナショナルギャラリーで印象派の作品を多く観ることができます。
中でもモネの作品は日本人にも大変人気があり、企画展などで日本にしばしば貸し出されるほどです。
これらの作品を日本で観るのも良いですが、収蔵元であるナショナルギャラリーで観る作品はあるべき場所で展示されているので、見ごたえが格段と違います。